「緊急時の口腔ケアのお話を伺いたいです。
ここ数年、大型の災害が増えてきてるじゃないですか。
こういう災害時に困るのって口腔ケアだと思うんですよ!」
ご質問ありがとうございます。
そうなんです。
今、100年に1度起こるかもしれない災害が毎月起こる時代になってしまっている。
それって本来人類が100年に1度くらいしか学べない事を毎年学ぶ事になる訳です。
学ぶというか教訓ですよね。以前は災害時、緊急時の口腔ケアなんて話題にならなかった。
それがなぜ注目を浴びる事になったのか。
それは、熊本地震で災害関連死のトップが呼吸器系の病気、その大半は肺炎で、
高齢者において、その多くが誤えん性肺炎だったんです。
誤えん性肺炎って、食べ物や唾液と一緒に口腔内の細菌が誤って気管から肺に入り込む事で起こる肺炎なんです。
つまり、口腔内が汚れていると、災害で生還されても、そのあと死亡する確率が高まる。ただそれが分かっていても災害時、口腔ケアができない。
で、備えをする事が大切だったんだと、最近は強く認識されるようになったんです。
じゃ、その備えは何が必要か。まず歯ブラシは最低限用意していただきたい。
歯ブラシを用意するのは、決していざという時に持ち出す防災グッズの中だけではダメなんです。バッグの中、職場。災害にあう時間、場所って分かんないんですよね。概して、家にいて、寝ている時がイメージされますけど、そうではないんですね。次に水。水は災害時、物凄い貴重になる。
ただ、優先順位として、歯ブラシ後のうがい以上に飲み水としての方が優先になる訳です。で、水が少ない時の歯磨きの仕方を覚えていただきたい。
まず、水30ccほど、これはほんのわずかですね。
コップに準備する。で、その水で歯ブラシを濡らしてから口の中に入れて歯磨きを開始。歯ブラシは徐々に汚れてきますから、ティッシュ、あればウェットティッシュで歯ブラシの汚れをできるだけ拭き取る。また歯ブラシ。
これを小まめに繰り返す。
用意した30ccのコップの水で歯ブラシをキレイにしようとしないで下さい。
最後にコップの水で2~3回すすぐ。
で、その時、歯みがき粉は使用しない。
それはもちろん、うがいに水が多く必要だからですね。
もし、液体歯磨きが用意できるなら、ぜひ用意していただきたい。
液体歯磨きは少量(10cc)を口に含み、20秒すすいでからブラッシング。
そのあと水で口をすすいでもすすがなくてもOK.
水を保管するのって難しいんですけど、液体歯磨きは3年くらいもちますから保管しやすい。
で、歯医者として、非常用持ち出しとして優先順位の高い物から挙げると、歯ブラシ、液体歯磨き、口腔内のウェットティッシュ、あと歯間ブラシやフロスって順になる。それ全てを常に持ち歩くカバンに入れておく訳にはいきませんから、せめて歯ブラシだけは入れておいて下さい。
あと、知識として、どうしてもそれらの物が用意できなかった時、まず、歯ブラシがない時、可能であれば水かお茶でうがいしていただきたい。
ハンカチやティッシュで歯をぬぐう事も効果はありますね。
それと、どうしてもその全てがあろうがなかろうが、災害時の緊張感で口の中の唾液は減る。それが病気を引き起こす。感染症になりやすくなる。
それには唾液腺のマッサージが有効です。
これは災害時だけではなく、虫歯、歯周病予防になりますから。
唾液腺のマッサージで検索すればすぐに出てきますので、ぜひ学んでおいていただきたい。こういった知識はいざという時、自分の命だけではない。
周りの方の命を守る事になりますから、今、ここでお話できて良かったです。
それにしても先ほどお話しました熊本地震で災害関連死のトップが口腔ケアが困難な事による誤えん性肺炎だったとか、歯医者に定期的に、ま、半年に1回くらい行ってクリーニングしてもらっている方は圧倒的にコロナになりにくいとか、岸田総理が国民みんなに歯科健診を受けさせて、国民みんなが余計な病気にならないようにしようと思ってらっしゃるとか、こういう事って歯医者の私たちって毎日耳にするから、もう常識なのかなって思っていると、そうじゃない。
こういった所で常に発信していかないといけないんですよね。
ま、こういった事って夫婦間でも一緒ですよね。
私なんて結婚して30年経ちますから、妻には私の考え方ややり方は全てさらしていますけど、彼女はそうじゃない。
未だに「あー、この人はこういう人なんだ」って気がつくことが多いんですよね。
特に最近分かって驚いたのは、この番組で話題に出ると機嫌がいいんですね。
私は目立ったりするのが嫌いだって言っているくせに内助の功を装って、実は目立ちたいんでしょうね。
今後、光邦さん、お許しいただければ、ここに出演、一緒にしてもらってもいいですか?
彼女にも何か発表してもらいましょう。
それにしても最近強く認識されているって言いましたけど、ズレってありますよね。
私たちが強く認識されていると思っていても、一般の方、知らない方ってすごく多い。
だから、どんどん発信しなくちゃいけない。
でも、それって夫婦間でも一緒ですよね。
私、結婚して30年経つのに、未だに妻に対して認識していなかった新しい発見ってありますよね。
付き合った期間も含めて、今更ある。
それってむしろ認識しなくていいというか、認識したくなかったっていうか、ま、そういった事があるから飽きずにやっていけるんでしょうかね。

